荒木経惟  楽園

2021.1.11 - 3.3

「今いるところが墓地だと思っている。実際にもね、墓場なわけよ、バルコニーとかそこらの場所全部が。私にとっては。だから、墓の中に住んでいるという気分を、すごく感じてる。浄土、極楽浄土だと思っている。今住んでいる梅ヶ丘というところが浄土なんだね。どんどん狭くなって、今の写真は身近な周りのことがすごく多くなってきているわけ。そこら辺の空き地かなんかに新しい家ができたり、前いた豪徳寺のあたりも壊して一戸建ての家がいっぱい建ったり、どんどん周りが変わっていくじゃない。

僕はそういうのがパラダイスだと思っている。今生活しているところ、住んでいるところがパラダイスなんだな、天国じゃないか、と。」

ある日の海外雑誌のインタビューに答えた、荒木氏の言葉である。2010年代に入ってから、花と人形や怪獣を撮り続けている。華やかにおどろおどろしく、不条理劇を思わせるオブジェと花の競演は、現実世界の縮図のようでもあり、桃源郷のメタファーのようにも見える。

「愛、とまでは行かなくても、何かの行為によって、不可解な部分が出てきたりする。

今、人形を撮ることが多いけど、人形だけど通じるし、面白いし、いろいろなことを教えられてる。首だけにしちゃって喜んでるとか、足一本切っちゃって赤く塗ったりとか。自分自身の中に、そういう部分があるんだね、きっと。日々犯罪をしているような感じでもあるし、子供の悪戯みたいでもある。」

完成度の高いインスタレーションは、写真家の日々の情景の中にある。