シルバーウィーク

AMの定休日は、月曜火曜ですが
両日(21日・22日)が祝日にあたります今週は
通常どおり、13:00より19:00まで
開廊いたしております。

art space AM is opened from 13:00 through 19:00
on September 21st and 22nd
as both days are national holidays.
(Usually we are closed on Monday and Tuesday.)

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『IMKA』issue 01/02/03

「IMKA」展のために制作された作品を収録した
マガジンスタイルの3分冊『IMKA issue 01/02/03』がそろいました。

IMKA issue 01
01-16

組作品(Polaroid)「EGGS」100点「FLOWERS」100点
ホワイトフレーム(Polaroid+Impossible) 約90点
ゴールドフレーム(Impossible) 約70点
ブラックフレームおよびモノクローム作品(Impossible) 約70点
KIMONO:KaoRi (6×7カラー) 4点
表紙:IMPOSSIBLEブラックフレーム「KaoRi」より
16ページ・H420mmxW297(A3正寸)

IMKA issue 02
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2015.8.15 (35㎜モノクローム)113点
表紙:「花とヤモリンスキー」(Polaroid)より
12ページ・H420mmxW297(A3正寸)

IMKA issue 03
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シアンフィルム(Impossible)約40点
マゼンタフィルム(Impossible)約40点
アニマルフレーム(Impossible)約50点
カラーフレーム(Impossible)約50点
半夏性[インスタントフィルムをカットし2枚の断片を接ぎ合わせた作品](Polaroid+Impossible)約160点
ペイント作品[インスタントフィルム上にアクリル絵の具によるカラフルなペイントのほどこされた作品](Polaroid+Impossible)約100点
表紙:「the photographer himself」ペイント作品より
16ページ・H420mmxW297(A3正寸)

価格は、単体の場合(税込)
『IMKA issue 01』 1800円
『IMKA issue 02』 1400円
『IMKA issue 03』 1800円
刊行部数 各300部

3冊セット(税込)
4000円

先行発売の『IMKA issue 01』をすでにお買い求めのお客様が
issue 02とissue 03をご購入なさる際には、受付にてお声がけください。
セット価格にて対応させていただきます。

また、Impossible Tokyoオフィシャルサイトにて、
オンラインによる販売も受付する予定です。
スタートいたしましたら、リンクをお知らせいたします。

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インスタントフィルムの現在

「淫夏」展では、新旧(インポッシブル社製・ポラロイド社製)インスタントフィルムそろい踏みの感があります。
ご来場されるお客様には、インポッシブル・フィルムをまだご存知ない方も多く、幾度かご質問を受けましたので、今回はそのお話を。

 ご存知のように、インスタントフォトの代名詞として今も多くの人々が口にする「ポラロイド」は、
1937年に創設されたPolaroid Corporationの商標です。
ポラロイド社は、諸般の事情で、2008年、インスタントフィルム生産から撤退。
 直後、世界中に普及していた数十万台ものポラロイドカメラから見込まれる需要を旗印にして投資家を募り、
三十代の科学者を中心とする有志がロマンを胸に、IMPOSSIBLE社設立。
オランダ郊外に在るポラロイド社の工場、機械、スタッフを引き継ぎ、2010年より流通をスタートさせました。
 日本法人IMPOSSIBLE TOKYOが、アジア市場の拠点として、
(荒木さん呼ぶところの)「若社長」(当時23歳)を代表に据え設立されたのも2010年のことです。

 IMPOSSIBLEの初代CEOであるF博士は、1年ほど前、投資家の一人に席を譲り、
ヨーロッパでSupersenseという会社をたちあげました。
日本法人の活動は、同じメンバーでBccという会社をたちあげ、インポッシブルフィルムの総代理店となりました
(Bccでは、業務をひろげ、空間デザイン、ウェブサイトの設計なども手がけています)。
 このような体制の変動はあったものの、オランダの工場では変わらず、
ポラロイド時代からの工場長を筆頭に職人たちが、日々開発に明け暮れてきました。

 本展をご覧になっていただければ一目瞭然ですが、ポラロイド社とインポッシブル社のフィルムの現像結果は、
寸分たがわないシステムにのっとったものでありながら、まったく違います。
 また、ポラロイド時代には白一色であった縁取りに、ブラックやゴールド、ヴィヴィッドカラーやアニマル柄が使われていたり、
正方形の画像面が円形だったり、マゼンタ、シアンのみの発色だったり、
インポッシブルでは、折々に、期間限定の奇抜なアイディアが発揮されてきたこともわかります。
(展示では、その変遷の軌跡を見渡すことができます。)

 F博士は、蜘蛛の研究で学位を取得した生物学者でした。
シャッターを切ってからプリントに生成されるまでのプロセスを、フィルムと小さな暗箱で終始させる有機的な作用を、
デジタルの力を借りず実現するインスタントフォトは、この男に、大きな魅惑とロマンを与え、化学の世界へと身を投じさせます。
 しかし、IMPOSSIBLE創立初期に生産されたフィルムでは、現像液が写真面に逆山形に漏れだして跡がのこる、
現像液が乾燥していく途中で気泡を吹き出し写真面の皮膜で線香花火のような破裂を起こす、
などといった珍現象が茶飯事でした。
 上記のような現象は、いまは影をひそめましたが、現在でも、インスタント(瞬間)フィルムの名とは裏腹に、
シャッターを押しフィルムが排出されてから、画像が浮かび上がるまでに、数分~数十分かかります。

 なぜ、製造機械を共有し、往時のすべてを掌握する職人が仕事をしているにもかかわらず、このような事態が起きるのでしょう。
 その主要な原因は、原材料にあります。
環境保護のための規制が厳しくなり、ポラロイド時代には使えた原料のほとんどを、今では使うことができないのです。
職人たちは、材料配合の面ではゼロからのスタートを、経験値と探究心でカバーし、日々熱意をこめて生産にいそしんでいます。
いまだ価格がやや高めなのは、製造工程に手作業が多く含まれることもあって、絶対的な生産量が少ないためです。

 同じ銀塩どうしでも、現像液の内容も銀の量も、昔とは違ってきています。
美術品としての価値がプラスされ、美術館などで大切に保護されている場合が多いようですが、
もし70年代頃の銀塩写真と今のものを比較できる機会がおありでしたら、きっと違いに気づかれるはずです。
コクがより深いと言えば、近いでしょうか。

 F博士の場合は、ポラロイドに近づこうとして幾多の挫折を繰り返しながら、
インポッシブルのフィルムならではの「表現力」に気づきました。
再現性から表現性へ。
模索の過程で、博士がもっとも撮影していただきたいと願ったのが、かねてより彼がその作品を厚く敬愛していた荒木さんでした。
博士は、科学の追求だけでは乗り越えることのできない課題と直面し、
科学の領域からアートを実践するとはどういうことなのか、突き詰めて考えたのではないでしょうか。

 生理を重視する科学の枝が、作品という果実を支え、
人々の感性が共振したり、反発したり、感動したり、記憶を揺さぶられたりして、物語を紡ぐなら
それは、いずれ大樹に育つのではないか、と。

作品を得て、お客様にいらしていただいて。
呼吸するように気配を吸収して満たされてゆく。
AMは、写真がそうであるように、見る方たちの想いによって再生するスペースでありたいと思います。
 
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荒木経惟展 Nobuyoshi Araki exhibition「淫夏 IMKA」

降りそそぐ雨のたえまに真夏日が押し寄せ、台風の影響を受けつつめまぐるしく変化する
気候が続いておりましたが、ようやく、東京も梅雨明けのようです。

「淫夢IMMU」展に続きIMPOSSIBLEの最初の2文字「淫」と
「夏」を掛け合わせた荒木経惟氏による展覧会が、まもなくスタートいたします。

このたびの展示は、すべて、未発表。
さまざまなテーマを包括しています。

まずは、膨大な点数におよぶ、インスタントフィルム作品。
あるものはダイナミックにペイントされ、あるものは「結界」に連なり2枚の断片が接ぎ合わされている。
登場まもない新世代フィルムや、不思議な試み=シアンのみ、マゼンタのみ、動物柄フレーム=が
群舞するかと思えば、
ポラロイド時代の「花」と「卵」が整然と並ぶ。

スタジオで撮り下ろされたKaoRiの、相反するはずの妖艶と清純が見事につやめくKIMONO姿。

さらに、2015.8.15.の日付を付して35ミリフィルムで撮影された、モノクロームの作品群。

常のように、ご本人が筆と墨で書き起こす、美しい書によるタイトル文字には
中国の一流彫り師が刻印した落款が添えられています。

総点数は、ゆうに1000点を超え、作品完成から展示のセットアップまでの間で
ペインティングフォトの画料が乾ききらなかったほどの最新作が並びます。

皆様のご来場を心よりお待ちいたしております。

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夏の中へ。

久々に、90年代をともに過ごした朋友とも呼ぶべき人たちの声を聴き
彼らのたゆまない努力と活動が、現在の写真状況に至る、忘れてはならない軌跡を
描きだしてきたことを思います。
写真は、事物が過去に埋没することをゆるさず、常に、アクチュアルで前のめり。

数十年といえば、確かに永い時間ではありますが、時空や世代をワープし鮮烈に新たな記憶を
生み出していく写真の能力とは、いったい何ぞやなどということを思いつつ。
今も変わらず、おおいなる旅人として、惑いながらもすべきことをきちんと果たし、
先駆でありつづける人々の言動から示唆された課題を反芻して
理解を深めることは
時を共有した者の、ある種のつとめかもしれないと、なぜかワクワクしながら
思っています。

ここしばらく設備のメンテナンスなどに傾注しておりましたAMですが、
夏に向かう季節の変容のなかで、
全情熱を注ぎ込み、次回展に向けて疾駆いたします。
「荒木経惟展 淫夏 IMKA」。
まもなく詳細をご報告させていただきます。

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野村佐紀子 アーティストトーク

4月25日の15:00より、野村さんによるアーティストトークを行います。

作品にあふれる情感の背景は、豊かな感性と資質に加え、日々技巧を探求しつづける
努力に裏付けられています。
写真家・野村佐紀子は、どのようにして、自らを研磨しつづけているのか。
写真への尽きない情熱を支えるものは?

皆様のご来場をお待ちしております。

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野村佐紀子「映し世」

野村佐紀子は、20年に及ぶキャリアの中で、様々な写真メディアを試みています。
代表的なシリーズとして知られるのは、やはり、漆黒の闇のなかで仄かな光を浴びて浮かび上がるモノクローム作品でしょう。
[「黒闇」(2008)「nude/a room/flowers」(2012)など]
さらに、超小型カメラ(通称スパイカメラ)で撮影したカラー作品集[「夜間飛行」(2008)]
デジタルカメラによる近作[「hotel pegasus」(2013)「sex/snow」(2014)「flower」(2015)]などを
つぎつぎと発表しています。

「UTSUSHIYO 映し世」は、4×5、スペクトラなど多様なフォーマットのインスタントフィルム作品で構成される展覧会です。
野村佐紀子が写真家としての活動をスタートした90年代初め、インスタントフィルムは、
コマーシャルの世界で本番撮影のためのイメージ確認に多用されていました。
(現在は、ご存知のように、ロケ現場に持ち込まれたPCの液晶画面がその役割を果たしています)。
その頃から彼女は、インスタントフィルムカメラを自在に操り、眼の前の光景に感覚が反応した瞬間を無作為に撮り続けてきました。
展示されるインスタントフィルムは、作品発表を意識せず、気持ちのおもむくままに撮りためられてきたものです。

本展では、過去から現在までに、野村が撮影したかぞえきれないほどのインスタントフィルム作品の集積から、抽出された約120点です。

写真家の美意識と思想と感情が注ぎ込まれた瞬間=moments=に
本能のファインダーが現実を囲い込む。
そこに、インスタントフィルム特有の化学反応が、
予期せぬ変容をもたらして、よりアブストラクトな世界へと
イメージを連れていく。
ケミカルと生理、偶然と感性が共振して生み出す心象風景。
寓意と無意識の連鎖。

その時間その場所に確実に存在した現実が、増殖された光の中で輪郭を浮かびあがらせているにもかかわらず
インスタントフィルムの画角の中に広がるのは、夢でしか出会えないような非現実的な世界。
たっぷりと練り込まれている、濃密な時間のエッセンスは、遠くに近くに、ただ揺らぐだけ。

本展で提示されるのは、写真家が写真家であり続けるあいだ、現実と感性が交差して、たゆまなく紡がれる協奏曲の断片かもしれません。
大小のかけらは、ご覧になる方のメロディに組み込まれ、新たな曲調を紡ぎだすことになるでしょう。

【野村佐紀子 Sakiko Nomura 】
1967年山口県生まれ。九州産業大学芸術学部写真学科卒業。91年より荒木経惟に師事。
93年より東京中心にヨーロッパ、アジアなどでも精力的に展覧会をおこなう。
主な写真集に『裸ノ時間(平凡社)』『愛ノ時間(BPM)』『黒猫(t.i.g)』『tsukuyomi(match&company)』
『夜間飛行(リトルモア)』『黒闇(akio nagasawa publishing)』『nude/a room/flowers(match&company)』
『hotel pegasus』『sex/snow』『TAMANO』『flower』(リブロアルテ)など。

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現在のAM。

設備関係の調整などのため、しばらく、お休みをいただいておりました。
ご迷惑をおかけいたしましたこと、申し訳なく存じます。

3月20日より4月初めからの次回展示まで、写真集をフィーチャーいたします。
荒木経惟作品集『結界』『世紀末ノ写真』『夏ノ中へ』『20×24 KaoRi』(アイセンシア)、
森山大道作品集『DAZAI』(MMM)。

IMPOSSIBLEのフィルムとカメラも、これまでどおり、ショップでご入手可能です。
フィルムは、まもなく、オランダの工場からの、とくにモノクロームの進化を楽しみにしてほしい、というメッセージとともに
新世代が入荷いたします。

アイセンシアとは、写真集と展覧会を軸にするレーベルです。
1999年から2000年にかけて撮影され、2001年2月28日に刊行された、荒木経惟写真集『世紀末ノ写真』から
活動を開始しました。
荒木さんの以前の住処であったマンション ”ウィンザースラム”(ご本人による。本名はウィンザーハイムです)の
西の空を仰ぐ広々としたバルコニーで、今は亡き美貌の愛猫チロが、元気に遊び回っていました。
有名無名の女性たち。カラオケに興じるサラリーマン。東京の街並。
スタジオとして写真家たちに愛用された、廃墟と化したかつてのラブホテル(新宿・ホテル石川)も今は
あとかたもないわけですが、そのような事実を知る人にも知らない人にも、
息つぐ間も惜しいほど鮮烈なシーンがつぎつぎと迫りきて、胸が高鳴ります。

01世紀末ノ写真S

『夏ノ中へ』は、透明な直射日光に満たされた2006年夏の数日間、カメラを携えた世田谷散歩の津々浦々です。
肉眼のレーダーにとらえられ、指(肉体)の反応を呼び起こした何かを、情景のなかにまさぐるように味わうことは
日常を豊かにするだけでなく、もうひとつの物語を生み出します。
はからずも、あふれだす情感、思い出、ときに、自分だけの言葉……写真が、見る者に与えてくれる特権の数々。

夏ノ中へ

ペンが止まらなくなりそうです。今夜はこのへんで失礼いたします。

3月いっぱいのAMの営業時間は、変わらず、13:00〜19:00です。
都合により、3/22、3/25、3/27、3/29、3/30は、お休みをとらせていただきます。

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作品集『DAZAI』を遠方からご希望の方へ。

 会期中に会場におこしになることが難しいのではと、案じられはじめた方から
「Daido Moriyama: DAZAI」展の巡回のお問い合わせをいただくようになりました。
展覧会は消費期限のない生もののようで、状況がふいに動くこともありましょうが、今のところは
日本では、AMのみの開催予定です。

 また、同時に、作品集『DAZAI』の、通販の可能性についてのお尋ねを承る機会も増えてまいりました。

 森山大道作品集『DAZAI』には、英語版と日本語版の二種があります。
本文中の掲載写真はまったく同様で、文字ページと表紙デザインが異なっています。
AMで双方を置いていますが、日本語版をお手にとられる方のほうが多いように見受けられます。

 AMでは、『DAZAI』(日本語版)をご希望のお客様には、通販を行います。
 お支払い方法は、宅急便の代金引換・クレジットカードのいずれかをお選びいただけます。
お値段は、日本語版[5400円(税込)]+送料[ご住所や発送方法により異なります]。
代金引換の方は、恐縮ですが、代引手数料として318円が加算されます。

 サイトの左上、[contact us]をクリックしていただくと、メールフォームが表れます。
日本語版希望とご記載のうえ、送信いただけましたら、詳細をお知らせいたします。
もし、お名前、ご住所・郵便番号、お電話番号をお書き添えいただけるようでしたら
次の返信にて即座に、お見積もりをご報告させていただくことが可能です。

 立春を迎えましたものの、明日は、関東地方の積雪が予報されています。
やさしい陽射しかと思えば、早朝の霜柱が零度近い寒さを呼び戻す繰り返しの日々です。
明日のご来場を予定されている方は、どうぞ足下にくれぐれもご注意くださいませ。

 

 

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ヴィヨンの妻 Villon’s Wife

 太宰治の小説へのオマージュとして森山さんによりセレクトされた作品で構成される『Daido Moriyama: Dazai』を読み解くよすがに、小説『ヴィヨンの妻』をひもといてみましょう。

 夫(主人公・大谷)の破天荒なふるまいに引き込まれる妻の、鋭い観察にもとづく女性言葉で描かれていくこの小説は、敗戦後の日本の混乱期の空気に満たされた21日間のできごとを軸にしています。この短い期間のなかで変質する夫婦の関係を通して、一見して享楽主義とみられる夫の心中に「男には、不幸だけがあるんです。」という頽廃的な人(死)生観が見え隠れし、同時に、けなげに夫の行動を、盲目的な愛と直感的な義務感でうけとめ、全身で受け入れることによって変質していく妻の胸中が、精緻な彫刻のように彫り込まれています。

 生きることの喜びを追い求めようとする妻と死をふさわしい落ち着き場所と暗示する夫、二人をとりまく人々の輪郭、随所に漂う時代の空気。
 そのようなものをまさぐりながら、読み進んでいくうちに、ぼうようとした、しかし、じつに豊潤な読後感がのこり、われ知らず、太宰治の胸中にぽっかりと広がる空洞へ、もしくは、深い深い森のなかへ、足を踏み入れてしまう。その死より70年が経過した現在も、命日には多くの人々が彼の墓前に集まる理由も、そこからつづく読者の彷徨の一環なのかもしれません。

 文中に、妻が電車の中吊りに、夫のフランソワ・ヴィヨンについての論文の見出しをみかけるくだりがあります。1461年の『遺言詩集』を代表作とするヴィヨンは、1431もしくは32年に生を享け63年以降に没したとされる15世紀フランスの詩人です。パリ大学を卒業、中世末期の百年戦争後の混沌の時代に、数度の投獄、最後には死刑を宣告されますが、特赦によって32歳で放免されています。犯罪者であり放蕩者。その死がいつ頃どのような原因によるものであったか、彼に妻があったのかなかったのか、記録は残されていません。

 『Dazai』は、MMMというレーベルで出版された、森山さん作品集のNO.5です。
自写像による『self-portrait』(NO.1)、花の映しこまれた作品による『sunflower』(NO.2)、インスタントフィルムの撮りおろしによる『white and vinegar』(NO.3)、70年代にポジフィルムで撮影されたカラー作品による『MIRAGE』(NO.4)から続く本作は、森山さんがこよなく愛する文学との写真集上でのコラボレーションを意図したところから、企画がはじまりました。

 「いつ撮った写真であっても、戦後の匂いがすると言われるんだよね」と語る森山さんですが、太宰治の生きた時代との共振感にとどまらず、世界にひろがる森山ファンへ、新規に英語化された『ヴィヨンの妻』を通して太宰治の凄さが伝えられていく喜びも、作品セレクトの原動力となったそうです。

 日本語版は、デッドラインぎりぎりで、刊行が決まりました。常にインターナショナルを意識してつくられてきたMMMレーベルでは、異色の存在。表紙のイメージは、桜です。ふわふわの表紙PP加工には「セレス」という最新技術が用いられ、通常用紙を綴じるとき糊の浸透をよくするために行われる「ガリ加工」が用紙全面にほどこされています。サイズがA5変形と、これまでにくらべるとこぶりなのは、読むという状態を考えてのことです。

 1/10のサイン会では、さらに、オリジナルのアイテムにポストカードを加えられるよう、制作にいそしんでいます。水彩画の用紙にプリント、ハンドクラフトでカットします。森山さんが数年前に発表した「ブエノスアイレス」のシリーズで気に入り、初めて採用した独特のエンボス感をもつ、ざらりとしたテクスチャーにしっかりと引き締まったスミの乗ることが特徴です。

 皆様のご来場を心より、お待ちしています。

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