石川竜一 okinawan portraits 2012-2016

2016.11.18 - 12.18

2016.11.18 - 12.18

11月18日より、気鋭の写真家・石川竜一による「okinawan portraits 2012-2016」を開催いたします。
『絶景のポリフォニー』とともに、木村伊兵衛賞の対象となった「okinawan portraits 2010-2012」に連なる新作が、最新写真集『okinawan portraits 2012-2016』として、刊行(赤々舎)されたことに併せ、故郷、沖縄の人々をファインダーにおさめたポートレートからセレクトされた60点を、二会場(エプソンイメージングギャラリー+アートスペースAM)にて、展観いたします。

 

あなたは誰ですか。
私はこの景色です。
あなたは誰ですか。
私はこの音です。
あなたは誰ですか。
私はこの香りです。
あなたは誰ですか。
私はこの痛みです。
あなたは誰ですか。
社会です。
あなたは誰ですか。
歴史です。
あなたは誰ですか。
私はあなたです。
私は誰ですか。

あなたは私です。そして、私が決して知ることのできない何者かです。
あなたはここまで来て、ここから行くのです。

宇宙(ひと)の前に突っ立つ。
目の前の宇宙は二本の足によって世界と繋がっている。
目の前にも背後にも、見渡す限り世界が広がっている。
その世界もまた、幾重にも重なり宇宙へと繋がっている。
世界が生まれたとき、宇宙では何が起こったのか。赤ん坊が立つとき、世界で何が起こっているのか。

震える膝に力を込めて、朦朧とする意識を両手で整えて。手首で脈打つ両手では数え切れないほどの時間。
2つの目だけでは見渡すことの出来ないほど深い意識。
1.4kgの脳みそに詰め込まれた無限の存在と、そのなかで生まれる偶然と矛盾。
動き続ける世界ですれ違う宇宙。

誰もが孤独な宇宙の中で、その命を削ることによって存在している。
その星屑のように舞い上がる削りカスのなかに立ったとき、美しさを問うことはあまりに儚く、
自由を問うことはあまりに虚しく、正しさを問うことはあまりに脆い。
ただただただ。ひたすらに。
生きる術を探す。
私は私である。

石川竜一

 

気づいたときには、石川の肖像写真の中に取り込まれている自分がいる。
撮影している石川竜一のファインダーを通過して見ているはずが、
いつのまにか、その人と石川の中間に在って、双方の鼓動を聴き体温を感じている。
写り込む人々と撮る人の「現在」に向かって押し寄せる
思い出や心の揺らぎや日々の暮らしのあれこれのレイヤーの中に、織り込まれている。

人だけではない。
古びた家の軒先や人気のない庭、茂る木々からのぞく海岸線、一本の小道。
そこここを体感する。あたかも、その写真の胎内に孕まれてしまったかのように。

石川竜一は、沖縄に生まれ、沖縄から学んだ。
偶然カメラを手にし、自然児の本能に突き動かされて、人々や風景と真っ向から向き合う。
たがいの関係性を仲立ちするのは、
双方が身の内からあふれさせる生命力そのものであり、日常の営みが発散しつづける脈動だ。
おおいなる自然とリンクする原初のたくましさは、
ひたすら今を生きることに注ぎ込まれる欲望こそが、
我々をぐいぐいと前に(あるいは、其処ではない何処かへ)押し出す原動力なのだという
シンプルだがとても大切な思いを、新たにさせてくれる。

本尾久子(アートスペースAM キューレター)

 

RYUICHI ISHIKAWA プロフィール

2014年の傑出した2冊の写真集により、30歳の若さで木村伊兵衛賞を受賞(2015年)。
破竹の勢いで進化を続ける、もっとも属目される写真家の一人。
生地・沖縄を原点に、活動エリアを広げ多数のメディアで取り上げられるも、
沖縄の透き通る海を想わせる深く美しい瞳に満ちる真摯さと好奇心の輝きは微塵も失われていない。

1984年沖縄県生まれ。
2010年から写真家 勇崎哲史に師事。
翌年、東松照明デジタル写真ワークショップに参加。
2012年『okinawan portraits』で第35回写真新世紀佳作受賞。
2014年、写真集『絶景のポリフォニー』
『okinawan portrait 2010-2012』を赤々舎より刊行し、
第40回木村伊兵衛写真賞受賞。
2015年、日本写真協会賞新人賞受賞。

主な個展
2015年「zkop+」(沖縄 コンテンポラリーアートセンター)
2016年「考えたときには、もう目の前にはない」(横浜市民ギャラリーあざみ野)など。
主なグループ展
2014年「森山大道ポートフォリオレビュー展」(沖縄)
2016年「六本木クロッシング2016展:僕の身体、あなたの声」(森美術館・東京)
「野生派 夜明けの不協和音」(UTRECHT・東京)など。

2016年秋、赤々舎より新刊『okinawan portraits 2012-2016』を出版。