石川竜一のポートレート

気づいたときには、石川の肖像写真の中に取り込まれている自分がいる。
撮影している石川竜一のファインダーを通過して見ているはずが、
いつのまにか、その人と石川の中間に在って、双方の鼓動を聴き体温を感じている。
写り込む人々と撮る人の「現在」に向かって押し寄せる
思い出や心の揺らぎや日々の暮らしのあれこれのレイヤーの中に、織り込まれている。

人だけではない。
古びた家の軒先や人気のない庭、茂る木々からのぞく海岸線、一本の小道。
そこここを体感する。あたかも、その写真の胎内に孕まれてしまったかのように。

石川竜一は、沖縄に生まれ、沖縄から学んだ。
偶然カメラを手にし、自然児の本能に突き動かされて、人々や風景と真っ向から向き合う。
たがいの関係性を仲立ちするのは、
双方が身の内からあふれさせる生命力そのものであり、日常の営みが発散しつづける脈動だ。
おおいなる自然とリンクする原初のたくましさは、
ひたすら今を生きることに注ぎ込まれる欲望こそが、
我々をぐいぐいと前に(あるいは、其処ではない何処かへ)押し出す原動力なのだという
シンプルだがとても大切な思いを、新たにさせてくれる。

本尾久子(アートスペースAM ディレクター)

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