去りがたい写真展  荒木経惟展「淫冬」 NOBUYOSHI ARAKI IMTOU

最新作をふんだんに含むインスタントフィルム作品
80年代に荒木氏がプリントした貴重な作品
AMで撮り下ろされた作品など多彩なシリーズが集められました。

「ARAKIMBAKU in 80s」
荒木氏自身のプリントによるヴィンテージ作品。
1979年から85年にかけて撮影されたものです。
当時の『SMスナイパー』誌連載のため制作され
フランスの雑誌の荒木特集のためプリントされました。
数多くの応募者から選ばれた女性をモデルに
民家のキッチン、出版社倉庫、ホテルの一室など
雑然とした身近な場所での撮影が行われています。
当時は、予算の関係もあって選ばれたロケーションかもしれませんが、
今見ると、そんな枠組みを通り越し
緊縛という手法を用いながら
画面のそこかしこにユーモラスな演出がほどこされ
独特のエッセンスがちりばめられた舞台のように感じられます。

インスタントフィルム作品では、ポラロイドによる2008年以前のシリーズと、
IMPOSSIBLEによる新作とが、シャッフルされています。

「西ノ空」
荒木氏は、現在、早朝のバルコニーから「東ノ空」の撮影を日々行っており
作品は、2015年の「往生写集」などで紹介されています。
このシリーズは、それ以前の作品で
入念に「西ノ空」を撮りつづけることで成り立っています。
陽光に満ちた青空が、宵に向かうにつれて暮れなずみ、
序々に深紅に染まっていく情景が、胸に迫ります。

「KaoRi@AM」
2015年に2回、AMでの撮り下ろしが行われました。
一度めは、前回の個展「淫夏」展示作品に囲まれて。
二度目は、作品のないコンクリート打ちっぱなしの壁面の中で。
ミューズ、KaoRiのARAKIMONOに始まり
着衣を脱ぎ捨てていく肢体が形成するさまざまなフォルムが
カラー・モノクロ双方で
美しく可愛らしく定着されています。

「花」「花とヤモリンスキー」
2000年代に撮影された、花、そしてヤモリンスキーの配された花。
写真家たちの永遠のモチーフである花ですが、
荒木氏の「花」は、ARAKI’s FLOWERSとして、
世界中の美術館やコレクターのゲストルームなどで咲き(枯れ)つづけています。
ヤモリンスキーとは荒木氏の命名で、住処が「ウィンザースラム」であった時代に
同傘していたヤモリたちを指します。
現在では、当時から乾き切っていた彼らのむくろは、粉と化してしまったそうです。

以上の3シリーズをメインに、
モノクロームプリントにダイナミックな線描をほどこして
ポラロイドフィルムで複写した「エロッキー」
フィギュア、オブジェ、人形、花などで構成される近作「PARADISE」
などのインスタントフィルム作品が、シャッフルされ展示されています。

視点や歩き方を変えるたびに、気づかなかった作品の魅力が目に飛び込んできて、
行きつ戻りつじっくり見れば見るほどに
もうひとつ、またひとつと、物語への入り口がたちあらわれます。

ついつい長居をなさってしまう可能性があります。
お時間の余裕がおありのときに、おこしいただくのがよいかもしれません。

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